絵もお話も、ほのぼのとした楽しい絵本です。自称「おうじさま」のスプーンは引き出しの中でいつも「つん!」とすましているばかり。なかなかほかのスプーンたちと仲良くなれません。でも本当はみんなとお話したかったみたいです。
食器棚の引き出しの中はいつもにぎやかでした。たくさんのスプーンたちがはりきって仕事をした後、その日の出来事をおしゃべりするからです。
ある日、引き出しは一日中閉まったままでした。それから何日か過ぎ、たいくつなスプーンたちはいねむりばかり。「ほぎゃあ! ほぎゃあ!」という声がして目を覚ますと、引き出しが開いて銀のスプーンが入ってきました。冠のついた箱に入り、足元に青いガラス玉がキラキラ光っています。銀のスプーンは「つん!」としていいました。「ぼくはね、スプーンのおうじさまだよ」
スプーンのおうじさまは、赤ちゃんにスープを飲ませるためのスプーンでした。始めはすましているばかりのおうじさまでしたが、赤ちゃんが初めてスープを飲むときのお手伝いができて、とてもうれしくなりました。それから毎日、おうじさまはほかのスプーンたちと同じように仕事をして、とても仲良しになりました。引き出しの中は以前のようににぎやかです。(店主)
スプーンのおうじさま(こどものとも年中向き2018年3月号)
黒崎美穂 文
鬼頭祈 絵
福音館書店
2018年3月1日発行
本体389円+税
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