主人公は泣いてばかりいる男の子です。本当は「たろう」という名前ですが、泣いてばかりいるから「なきたろう」と呼ばれています。
生まれてから泣いてばかりのなきたろうは、5つになっても泣いてばかり。泣くから遊んでやらないといわれて泣き、それなら遊んでやるといわれ、うれしくなってまた泣くという具合です。村人たちも、なきたろうの泣き声が大きくて鶏や牛が怯える、しょっぱい涙で稲を枯らすなどといって、ほとほと困ってしまいます。
なきたろうはとうさんから、山に行って強くなる修行をしろといわれます。山で天狗と出会い、泣き比べで負けた天狗は団扇でなきたろうを扇ぎ飛ばしてしまいます。飛ばされた先でなきたろうは大きく成長します。なきたろうが自分自身のやさしい心で強くなったことに心を打たれます。
創作民話の絵本です。民話風に作られた大胆なお話の展開に引き込まれます。登場する人物や動物たちを生き生きと描いた絵が、お話の世界に深みと広がりを与えています。本書は1974年発刊の「なきたろう」(文研出版)を新たな装丁・編集で復刊しました。(店主)
なきたろう
作・文 松野正子
絵 赤羽末吉
復刊ドットコム
本体1850円+税
2017年8月24日発行
0 件のコメント:
コメントを投稿